お箸は唯一、「口の中に触れる」食器でありながら、

材質や仕上げ、また安全性に関して意識される事が

他の食器よりも少ないように思う。

 

自分に置き換えてみても、

お箸屋さんになる前は、お箸の安全性や利便性も含め、

あまり気にせずに使っていた。

 

「日本人の一生はお箸に始まり、お箸に終わる」

と云われるほど生活に密着し、

無くてはならないものとして

大切に扱われていた事を考えると、

 

自分は、大量生産時代の

「お箸は安く使い捨て」と考える

典型的な「現代人」だったと思う。

 

今は箸専門店なので

一番に安全性を重視しているのは勿論だが、

長く使っていても飽きない

どこか温かみのある天然木と

天然漆で仕上げたお箸を扱っている。

 

価格的には高く感じる部分もあるが、

他の材質のお箸ではなかなか代用できないところもある。

まず一つは「使い捨て」でなく、永く使って頂ける事

天然木なので、箸先をかじって

少し折ってしまったとしても、

長さをそろえて御直しが出来るし、

漆が剥げてしまった場合でも、

また漆を塗ることによって
、何度でも「生まれ変わる」。

 

環境に優しいという事も勿論だが

「今まで使っていた中での思い出も保存する事が出来る」

 

そしてもう一つは少し大げさだが、

使っている人の風景が見える事」。

 

お客様と直接お話しさせて頂く時間を多くいただけるので、

いろいろなシーンを見せて頂く事が出来る。

 

生まれたばかりのお孫さんを想いながら

御箸を選ばれている時の、

おばあちゃんの何とも言えないやさしい眼差しや、

 

結婚式を控えた新郎新婦様が

ご両親への感謝の気持ちとして

思いを込めて製作した手作り箸をお預かりし、

漆を塗り、仕上がったお箸を

受け取りに来られた時の

新郎新婦様の少し照れくさそうな笑み。

 

嫁ぐ娘さんの結婚祝いに夫婦箸と一緒に

「新しい息子さん」をいつでも家族として

迎えられるように

「義息子さん」のお名前の入ったお箸も一緒に

「ご自宅用」として買っていかれるお母様など。

 

お箸を通して色々な方の想いや

やさしさを風景として見せてくれるのは、

天然木と漆から伝わる温かさならではと

思える場面が幾つもある

 

お箸屋さんなので、贈られる方と受け取られる方の

「橋(箸)渡し」をさせて頂いているつもりだが、

多くの場合は逆で、

お客様から「幸せのおすそわけ」を頂いている。

 

*昨年末、桐生タイムス社発行のフリーペーパー

 「タウンわたらせ」に掲載させていただいた文です 

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