お箸やさんにはいろいろな
お客様がやってきます

「銀のお箸ありますか?」とか
「名入れ込みで500円くらいのお箸ありますか?」

とかご希望に沿う、添えないは別として

結構、お箸をお求めになる
理由や種類も様々です

その中で一番多いのが
「一本だけ売ってくれませんか?」
というお客様です。

勿論、お箸は2本で一膳なので
基本的には難しいのが現状ですが

「一本、折れてしまった」とか
「一本だけ失くしてしまった」
という方がほとんどなので

そういう場合には、臨機応変に
対応し、一本だけお売りすることもあれば

交換させていただく場合もあります
(買ってから期間があまりたっていなく
折れたり、傷んでしまった場合など)

そんなある日の昼下がり
一人のおばあちゃんが
お店に入ってこられて

「このお箸と同じお箸を
一本だけ、売っていただけませんか?」

とちょっと照れくさそうに
聞いてきました

差し出されたお箸を見てみると
ほとんど使った形跡がなく

金の彫刻名入れで「きく」
綺麗に入っています

私:どうされたのですか?
こちらのお箸でしたら

一膳、交換させていただいて
同じように名入れをさせていただいて

一本分の金額で結構ですよ(^_^)

おばあちゃんの持ってこられたお箸は
削り箸で、同じお箸は勿論
お店に在庫としてありますが

すべて手つくりなので
少しずつ、重さや太さ、色合いが
異なるため、


持ってこられたお箸と
すべての条件を合わせるのが
難しかったので、

そのように(交換)ご案内したのですが

おばあちゃんは
「いや、一本だけでいいんです」
と今度はお願いするように言ってこられました

私が少し戸惑った表情を一瞬見せると
おばあちゃんは事情を話してくれました

「「このお箸は孫が敬老の日
少ないお給料からプレゼントしてくれたんです。

遠くに住んでいるので贈ってきてくれて

今度遊びにきた時に御礼かねがね、
「いつも大切に使っているよ(^_^)」
見せるつもりで、大事に使っていたんです

が、この間、台所で洗っているときに
自分では気づかなかったんですけど

ゴミ箱に一本だけ落としてしまったらしく

どこを探しても見つからないんです(>_<)

せっかく買ってくれて
名前まで入れてくれたのに

本人の前で「失くしちゃった」とは
申し訳なくて言えないので

でもかといって、全く新しいものだと
孫の気持ちまで失くしてしまう様で。。」」

私は、事情を聞かないうちに
親切な提案と思って簡単に
「交換します」と
言った自分が恥ずかしくなりました(>_<)

おばあちゃんの持ってこられたお箸と
同じお箸を店の在庫から全部持ってきて

色合いや太さ、重さなど
一番近いものを探しました

そしてようやく見つけ出し、
名入れをし、一時間後に取りに来て
お渡しして帰り際におばあちゃんは

「ありがとうございます。
歳をとってくると
大事なものがどんどん増えていくけれど

それを自分では
ちゃんと守って大切にしているつもりなのに
忘れたり、失くしたりしてしまう

それがちょっと切ないし情けない」

元気の無い声でおっしゃいました。

でもお孫さんからもらったお箸を
たとえ一本は失くしてしまわれたかもしれませんが

中に入っていたパンフレットを手がかりに
当店を探し出して、同じお箸を見つけて

同じように取り戻そうとした気持ちが

何よりもお孫さんの気持ちを受け取って
そして大切に思っている証ですよ(^_^)

おばあちゃんは少し笑顔を浮かべて
お店を後にされました

日々、接しているお箸は

お店を離れた瞬間、贈った人の
心がこもって受け取る人に伝わり

当店の中では同じ商品であっても
決してそれに代わるお箸は無いんだなと

改めて感じました。

お箸は人の心と心をつなぐ

「架け橋」なんですね(^_^)

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